TorrentFreakで、Team Xecuterの主犯格と言われているMax Louarnが現在は釈放されフランスで暮らしていることを伝えていました。
Team Xecuterのメンバー3名(Gary Bowser(GaryOPA)、Max LouarnおよびYuanning Chen)がNintendo SwitchのカスタムファームウェアSX OSの販売やMODチップSX Core/Liteの販売で著作権法違反に問われた事件。
主にウェブでの広報活動を担いTeam Xecuterの顔となっていたGary Bowserに懲役40ヶ月の判決が下されましたが、Gary Bowserは裁判の中で自分は雇われ側で給与しか得てないので質素なアパート暮らしだったが、主メンバーだったMax Louarnはフランスで「贅沢な休暇とパーティー」を楽しんでいたと主張しています。
これまで先に米国で裁判が進んでいたこともありニュースになるのはTeam Xecuterの「顔」だったGary Bowserの話ばかりで、Gary Bowserの主張する「主犯」であるMax Louarnについては逮捕以来ほとんどニュースになっていません。
分かっていることは、Gary Bowserの裁判記録にあったMax LouarnはMaXiMiLiEnとして知られていたTeam Xecuterのリーダー格の人物で、ゲームをダンプしては違法に配布していたParadoxというチームのメンバーだったと言うことだけです。
そんなMax Louarnですが、実は現在保釈されて故郷のフランスにいます。
そのMax Louarnがフランスの新聞Le Monde(ル・モンド)のインタビューに応じました。ル・モンドは有料記事として配信していますが、TorrentFreakが英語記事の読み物として公開。その内容からMax Louarnの人物像が見えてきました。
Gary Bowserより罪は重い
Gary Bowserは懲役40ヶ月の判決でした。まだMax Louarnの裁判は始まっていませんが、Team Xecuterの主犯と見なしている検察側は、少なくとも10年以上の懲役になると見込んでいます。Gary Bowserの40ヶ月の刑期はハッキングシーンへの警告メッセージだと検察側は主張しましたが、Max Louarnの場合は更に強いメッセージをシーンに対して発することになるとされています。
しかしMax Louarnは罪を認めておらず、自身のことを「ユーザーが購入したデバイスでやりたいことをできるようにする手助けをしている過ぎず、誰もがデバイスにアクセスできるようにするために活動する反逆者だ」と主張しています。
最終的にその主張が認められるのかは裁判の結果に委ねられますが、海賊版ゲームによる業界への経済的打撃を認定したGary Bowserの判決がある以上、彼の主張は認められる可能性は低いです。Max Louarnが米国の法廷で裁かれることになればですが…実はその裁判自体実現の見込みは決して高くはないのです。
10代からハッカーとして活躍
逮捕時に48歳、現在50歳のMax Louarnは10代だった1980年代からハッキング活動を始めました。現在までに数百万ドル(日本円で数億円)を稼ぎ、その金で世界中を豪遊していたようです。
1982年に発売されたCommodore 64というPCを両親から買い与えられてスタートした彼のハッキング人生は次第に技術が上達し、14歳の時には同じような活動を行っているメンバーと掲示板を通して情報交換を行うようになりました。
当初は楽しいという理由でハッキングを行っていたものの、それが金になることに気が付いてから主目的がハッキングで稼ぐ方向に変わりました。
違法にゲームをダンプして海賊版として配布、クラッキングを行ったりシリアルキーを生成するキージェネレータなども配布していたParadoxというチームのメンバーとしてハッキングシーンでMaXiMiLiEnとしてMax Louarnの名は次第に知れ渡るようになりました。
DSのFlashcartで任天堂の宿敵へ
かつてNintendo DSのFlashcartやMODチップを販売していたDivineoというサイトがありました。十数年以上ゲームハックシーンを見てきた方なら記憶にあるかもしれません。そのDivineoを運営していたのは実はMax Louarnです。Max Louarnの稼いだ数百万ドルはFlashcartやMODチップ販売による収益です。海賊版ゲーム配布はFlashcartやMODチップ販売のための餌でした。
Max Louarnはハッキングにより被害を受ける企業が存在することは認識していたものの、大金を稼ぐ企業から金をせしめることに何の問題があるのか、という考え方をしていたようです。
当然それを許す企業があるはずもなく、Max Louarnは23歳だった1994年に当局のおとり捜査でアメリカへ招かれて入国した際、逮捕されました。40年の懲役刑の可能性があったものの、彼は罪を認めることで5年8ヶ月の懲役刑となりました。
刑期を終えた1999年に釈放され一旦はフランスへ戻りましたが、稼げるハッキングへの情熱は衰えておらず、アップローダーサービスのMegauploadに出資するなど活動は続きます。
2005年にはソニーのゲーム機用MODチップをDivineoで販売したことからソニーに損害賠償の訴訟を起こされ、敗訴した結果500万ドル以上の損害賠償を請求されました。
その後Max LouarnはNintendo DSのFlashcartの販売に手を付けたことから任天堂にFlashcartの販売停止を求める訴訟を次々と起こされます。しかしフランスでの裁判ではFlashcartは違法な製品と訴えた任天堂が逆に違法にDSのシステムを保護しているとして任天堂の訴えが棄却されました。これによってMax Louarnは任天堂から憎き宿敵と見なされることになります。
そして2020年、任天堂の味方についた米国司法省はNintendo SwitchのSX OSやMODチップである違法目的の製品であるSX Core/Liteの販売をしたとしてMax Louarnを逮捕したのです。
タンザニアで逮捕後釈放 現在はフランスへ
カナダ出身のGary Bowserはドミニカ共和国で逮捕、米国に強制送還され裁判で実刑判決が下されました。一方フランス人のMax LouarnはFBIに指名手配され、滞在中のタンザニアにある高級ホテルZuri Hotelで逮捕され、拘留されました。しかしタンザニアの裁判所はMax Louarnの逮捕は違法と認めた決定したため、逮捕から数週間で釈放されました。
釈放されたMax Louarnは再びFBIに逮捕される前にそのまま友人の持つプライベートジェットでインド洋にあるフランス領のレユニオン島へ旅行に行きフランスへ戻りました。
アメリカで裁かれた場合、Gary Bowserと同じ結果となることは明白であるためMax Louarnはアメリカの法廷で無罪を主張するつもりはない、と言います。
「Gary Bowserは自身の減刑のために司法取引に応じ、やってもいない罪を認めたたけでなくTeam XecuterのリーダーはMax Louarnだとしたために自分が非難されているが、自分は無関係だ。またGary Bowserは質素な暮らしだがTeam Xecuterは大富豪でMax Louarnは儲けた金で豪遊となっているが、もうそれが事実として決められてしまっているのがアメリカの正義だ。」
Max Louarnは現在はフランスで比較的自由に暮らしていますが、海外口座や暗号資産は凍結され、FBIに指名手配されているためにフランス国外へも出られない状態です。
フランス国内にいる限りは安全なのかというとそうではなく、逮捕された際Max Louarnが持つデバイスのロック解除パスワード提示を拒否したことをフランス国内で訴えられています。Max Louarnの弁護側はまずこの訴訟を終わらせようとしています。
Max Louarnは今、フランスにいる限り逮捕されない状態をより安全に確保しようと動いていることになります。
過去に一度は逮捕され刑務所で過ごしたこともあるMax Louarn。罪を認めて刑期を短くし、刑期を終えた後再び活動を再開するという過去と同じ選択はしたくない理由が今回はあるようです。アメリカで裁かれ実刑判決を下されると困る事情。それは10代ではなく50代になったMax Louarnの現実が以前とは異なるからです。
「今なら服役するのは大変です。父親の世話をしていますし、16歳の娘もいますし、もうすぐ2人目も生まれますから。」
>現在までに数百万ドル(日本円で数億ドル)を稼ぎ、
日本の通貨はいつからドルになったんでしょう・・・