判決を抑止力に Team Xecuter裁判 検察はGary Bowser(GaryOPA)被告に懲役5年の実刑判決を望む

Arstechnicaで、Team Xecuterの裁判について逮捕、起訴されたGary Bowser(GaryOPA)被告に検察側は5年の実刑判決を求め、長期の実刑判決により犯罪への抑止力としてのメッセージを発信したいと考えていることを伝えていました。

legal action

XecuterがNintendo SwitchのカスタムファームウェアSX OSの販売やMODチップSX Core/Liteの販売で著作権法違反に問われ逮捕された後起訴されたGary Bowser(GaryOPA)被告は、刑事裁判でTeam が裁判で起訴事実を認め、損害賠償金450万ドルを自主的に支払うことになり、かつ民事裁判では1,000万ドルの損害賠償金を任天堂に支払うことで任天堂と和解することに同意しています。しかし検察側はこれでこの裁判を終息させるつもりはなく、実刑判決を望んでいることが明らかになりました。

この理由として検察側は、今回の事件が各種報道により広く伝わっており、「犯罪行為には必ず結果が伴うのだというメッセージを送る必要がある」ことを挙げています。ゲーム業界を弱体化させる行為に直結する著作権軽視の行為は損害賠償、つまり金で解決しただけでは終わらず制裁を科される悪質な行為なのだと広く知らしめる必要があるとの見解です。その制裁として検察は5年の懲役刑を見据えています。

今回の事件に留まらず、今後発生する可能性がある同様の著作権違反行為の判決基準となる可能性が高いこともあり、検察としては是が非でも実刑判決を裁判で出すことを望んでいます。

高額な損害賠償金と5年にも及ぶ実刑判決はかなり重い制裁ですので、実際検察の筋書き通りの判決が下れば著作権法違反行為に対する抑止力としては十分機能するでしょう。

一方で、Team Xecuterの代表格扱いされ、事実上の主犯として裁判を受けている立場のGary Bowser(GaryOPA)被告は裁判の中で一部異議を唱えています。

Gary Bowser被告は当初Team Xecuter製品はHomebrew愛好家のための製品だと主張し海賊版ゲームをプレイできるようにするためではなかったと主張し不正行為を否認していましたが、最終的には製品購入者が海賊版ゲームをプレイできるようにすることが目的だったと容疑を認めています。一方でGary Bowser被告と彼の弁護士は容疑自体を争点にせず、被告は首謀者ではないとして5年より短い19ヶ月の懲役を主張しました。

Gary Bowser被告の主張はこうです。

“Team XecuterでのGary Bowser被告の立場を検察側は「上級幹部」としているが、実際には同じく逮捕、起訴されたMax Louarn被告に雇われて給与を得ていただけの身分であり、同じく起訴(しかも逮捕されてない)されたYuanning Chen被告と共にMax Louarn被告の下で運営を手伝っていたに過ぎず、広報を担当していたためにすべてのリスクを負いながらも最小の利益しか得ていない。”

答弁書によると、弁護団はGary Bowser被告についてTeam Xecuterの7年間で推定32万ドルしか稼いでいないのに対し、Max Louarn被告とYuanning Chen被告はデバイス等の数千万ドルの売り上げから数百万ドルを稼いでおり、Gary Bowser被告は出身地のドミニカ共和国で質素なアパート暮らしをつつましくしていただけだが、Max Louarn被告はフランスで「贅沢な休暇とパーティー」を楽しんでいたと述べている。そして首謀者には当たらず、起訴された3人の中では最も罪が軽いことも付け加えています。

確かに各種報道で裁判について出てくるのはGary Bowser被告の話ばかりです。Max Louarn被告の裁判もYuanning Chen被告の裁判も進んでいるにもかかわらず、です。

これにはおそらくいくつか理由があります。

一つは、Gary Bowser被告がMaxconsoleやGBATempなどの著名なサイトでGaryOPAとして広く知られる著名な人物だったため、傍目には首謀者にしか見えないこと、そして3人の中では最も年上だということです。メディア側もそれを分かっているからGary Bowser被告だけをニュースでことさら取り上げているのでしょう。逆にいうと、検察側はそれを逆手にとって重い判決を出すことで抑止力に繋げたいという絵図を描いていることになります。

検察側同様、今回被害者になっている任天堂としても実利が高く影響が大きい結果を望むには、やはり「あのGaryOPA」を主犯格として扱った方が得策です。実際の主従関係なんて知ったこっちゃない、というのが本音でしょう。

著作権違反では議論になりませんが、殺人罪等の重犯罪の場合、被害者(またはその遺族)の権利より加害者の人権を重視するかのような判決が見受けられることがあります。被害者側からすれば、加害者の人権を尊重すること自体が許せないでしょう。もちろん加害者側にもいろんな事情があるかもしれませんので一刀両断はできませんが、Team Xecuterの今回の事件に関しては加害者側の事情は必要以上に考慮されるべきではないと考えます。

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