コードネームProject Scarlettと呼ばれていた次期XboxはXbox Series Xとして正式発表されました。
個人的にはXbox Series Xはハイスペックかつ過去の全世代期の後方互換を備えていることが最大の魅力だと思いますが、いかんせん日本での歴代Xboxはすべて鳴かず飛ばずのため後方互換はあってもなくても売りにはならないのが残念です。
さて、しばらく情報がなかったマイクロソフトの次世代ゲーム機に新型の話題が正式投入されたため、海外では人気のあるXboxの次世代機Xbox Series Xの新情報が主に海外メディアから一気にあふれ出てきました。マイクロソフト関係者のインタビューから判明した事実、情報筋のよるリーク、噂レベルの話などです。
今回は最近出てきたXbox Series Xの情報についてまとめてみました。
Xbox Series Xスペック
Xbox Series XはXbox Oneの高性能版であるXbox One Xよりも「4倍パワフル」に設計されています。4倍という具体的な数値を示すXbox Series Xのスペックシートは公表されていませんが、WindowsCentralは最新情報と独自に入手した情報を掛け合わせてXbox Series Xのスペック予想データを公表しました。
CPU: カスタムAMD Zen 2ベースCPU (8x @ 3.6 GHz)
GPU: カスタムAMD Naviベース GPU (12 TF RDNAアーキテクチャ)
メモリ: 16GB GDDR6 RAM (ゲームデベロッパには13GB分の使用が保証されている)
ストレージ: NVMe SSD (読み込み速度は最大2GB/sの模様)
映像出力: 8K/ 4K @ 120Hz
光学ドライブ: 4K Blu-ray
ポート: 不明
本体色: マットブラック
本体価格: 不明
発売日: 2020年年末商戦期
外形寸法: 312 mm x 157 mm x 157 mm (幅×奥行き×高さ)
不明となっているポートですが、WindowsCentralではUSBポートはType-Cではない普通のType-Aがフロントに1つ、裏側にはHDMIポートがあるはずだがDVR機能で使われているHDMIのパススルーポートについては削減されている、としています。
外形寸法は、Xbox Oneが300 mm x 240 mm x 60 mm(幅×奥行き×高さ)のため、見た目はXbox Oneの2倍近くの体積を持つ程に大型化したことになります。ゲーム機と言えば電源を投入するとファンの音がけたたましく鳴り響く印象がありますが、Xbox Series Xでは空気の流れを利用した静音技術を採用しているようで、その技術を採用した結果が筐体の大型化に繋がったようです。何かと小型化を好む日本市場では不利な形状かもしれません。
また、SATA SSDより高速なNVMe SSDの採用によりデータの読み込み時間が最大2GB/sとなり、読み込むのに1分間程度かかっていたゲームでもわずか数秒にまで短縮されます。近年のゲームデータの大容量化による読み込み時間はユーザーの不満材料の一つのため、ゲーム容量が大きくなることはほぼ間違いない次世代ゲーム機ではSSDの高速化は必須とも言えます。市場全体でも今はまだSATA SSDが主流ですが、NVMe SSDは大容量化と価格下落が続いており、近い将来主流のSSDはNVMe SSDに変わっていくでしょう。
Xbox Series Xの後方互換
マイクロソフトはXbox Series Xの後方互換についてXbox One向けのタイトルはXbox Series Xでも動作するので、Xbox Oneで動作する初代Xbox、Xbox 360のタイトルについても動作すると発表しています。過去の全世代期の後方互換であることには間違いありませんが、実際にはXbox Oneという1世代前に対する後方互換を確保しただけで、そこにXbox Oneで動作する初代Xbox、Xbox 360後方互換対応タイトルも含まれていることから全世代期の後方互換、というのが実際のところのようです。
Xbox Oneの場合、Xbox 360への後方互換は発売後時間が経過してから実装されましたが、Xbox Series Xでは発売日時点から対応していることを正式に発表しています。最近はあまり後方互換が重視されなくなってきている傾向はありますが、発売当初から後方互換を有することは既存ユーザーへの買い換えの障壁を取り除く役割を担うこともあり、実装できるのであればあるに超したことない機能です。
Xbox Series Xの名称
Xbox Series Xというのは日本語で書くとイメージしやすいですが「Xbox シリーズX」で、実は一連の製品名を表しています。
コードネームProject Scarlett(プロジェクトスカーレット)として開発されていた次世代期の総称が「Xbox シリーズX」で、その「Xbox シリーズX」にはコードネームAnaconda(アナコンダ)と安価な普及モデルLockhart(ロックハート)があることになります。つまり、次期Xboxのブランド名は「Xbox 」であり、複数の「シリーズ」が存在することを意味するのです。
これは「Xbox シリーズX」という名称が発表された際に、表示が3段に渡る
The New(小フォント)
Xbox(大フォント)
Series X(中フォント)
で、Xbox以外の文字が小さくなっていることに違和感を感じたBusiness Insiderがマイクロソフトに問い合わせたところ、「次世代ゲーム機へと引き継いだ名称は単に”Xbox”だけで、”シリーズX”は次世代期全体を通した名称」との回答があったことから分かったものです。
マイクロソフトの次世代ゲーム機の名称(ブランド)は初代と同じXboxで、「Xbox Series X」という名称を発表することで将来追加モデルを発売する余地を残していることになります。
現行世代機はXbox Oneから始まりXbox One XやXbox One Sというモデルが後に発売されました。次世代機も同じようなラインナップになった場合、例えば「Xbox Series X」「Xbox Series S」というモデルになるのだと思われます。「Xbox Series X」という名称は現時点で正式発表されているため、2020年発売モデルは「Xbox Series X」と呼ぶモデルになります。
Xbox Series Xの価格
Xbox Series Xの発売は2020年の年末商戦ですが、気になる価格については2020年の夏までに、早ければ来年6月のE3で発表されると予想されています。
Xbox Series Xの価格については、正式発表やリーク情報含めても一切ありません。WindowsCentralがツイッターを通じたアンケートでは、ユーザーがXbox Series Xに期待している価格は499ドルでした。つまり、499ドルなら適正な価格だと感じる人が多いということになります。日本円のイメージだと、5万円を切るくらいでしょうか。
この499ドルという価格は現行モデルであるXbox Oneの発売時の価格と一致しています。今ユーザーが思い浮かべる499ドルという数字には妥当性があるわけではなく、実際にはマイクロソフトは自らの歴史によりユーザーに受け入れてもらえる価格を印象操作してきた結果とも言うことができます。それがユーザーの期待する499ドルというXbox Series Xの価格に繋がっています。
ここで、普及版となる安価なLockhart(ロックハート)の存在を考えてみます。日本円にして1万円から2万円安価なモデルになると思われますが、Lockhartは「Xbox Series ●」という名称として299ドル、ないしは399ドルで発売されるでしょう。販売当初からそのような価格でLockhartが販売されれば自ずと販売のメインはLockhart「Xbox Series ●」になってしまい、ユーザーが払ってもいいと思っていた価格である499ドルのXbox Series Xが売れなくなってしまいます。
その状況になることは容易に予想できるため、マイクロソフトが取り得る販売施策は次の2つのうちいずれかです。
1) Xbox Series Xを499ドルで販売し、カンフル剤として時期をずらして安価なLockhart「Xbox Series ●」を投入
2) 499ドルはLockhart「Xbox Series ●」で、ハイスペックモデルとなるXbox Series Xはさらに高額モデルとして同時販売
ここで、かつては何でもかんでもハイスペック一辺倒だったスマートフォンを例に挙げて考えてみましょう。最近のスマートフォンは高級モデルを高額化し、別途買いやすい価格帯の普及モデルを用意する戦略に変わってきています。高価格ハイスペック一択という条件をメーカー側から突きつけてきた以前とは異なり、ユーザーがスペックを吟味し必要だと思うモデルを購入するという市場が育ってきたといえます。
しかしこれはデバイスの性能がほぼ上限に達し、少し古いモデルであっても最新モデルと大きな性能差が生まれにくくなってきていることから派生したビジネスモデルで、付加価値に対し高価な対価を払うことで高級モデルをより高額化して利益を得ています。、
今のゲーム機にも、この高級モデルと普及モデルというビジネスモデルが当てはまります。現に現行モデルのSwitchやPS4、Xbox Oneすべてがこのビジネスモデルを採用しています。
そこで、先のユーザーの期待する499ドルというXbox Series Xを考えてみます。アンケートは単にいくらなら払ってもいいかと聞かれているに過ぎません。高級モデルと普及モデルというビジネスモデルの存在とは別問題です。そして499ドルが高級機の価格なのかを考えてみて下さい。おそらく答えは「高級機の価格ではない」でしょう。
これでおのずとマイクロソフトが取り得る販売施策が読めてきます。
499ドルはLockhart「Xbox Series ●」で、ハイスペックモデルとなるXbox Series Xはさらに高額モデルとして同時販売です。この場合はLockhartは499ドルよりももっと安く価格設定されるでしょう。売れ筋はLockhart「Xbox Series ●」ですが、そこそこの販売台数でも高額な価格設定で利益を生む憧れのハイスペックモデルXbox Series Xをメディアが褒めちぎり、欲しい人だけが買っていくことになります。この理屈だとソニーのPlayStation 5も標準モデルはそこそこ安く、Proモデルは欲しいけどちょっと高くておいそれと手が出ない憧れの高級マシン化するかもしれません。
今、マイクロソフトはXbox Series Xの価格設定を、市場の反応やライバル(PlayStation 5)の動向を見ながら検討を重ねているはずです。
【参考記事】
■WindowsCentral: Everything we know about Xbox Series X: Launch titles, specs, updated design, and more
■IGN: Xbox Series X Will Have Backwards Compatibility at Launch
■Business Insider: The next-generation Xbox has a much simpler name than you might think: It’s actually just ‚Xbox‘