GBATempで、Android向けオープンソースSwitchエミュレータ SkylineについてDMCAテイクダウンによって開発が中止となったことを伝えていました。(poppoさん情報ありがとね)
Skylineの公式サイトには現在
No longer in active development
開発は行われていません
と表記されています。
その詳細については以下のように書かれています。
「潜在的な法的リスクがあるためSkylineのすべての開発を中止しました。ウェブサイトはしばらく残りますが、将来的には削除されます。Discordサーバーは当面の間は活動しますが、いずれ別のプロジェクトに移行します。」
突然の開発中止発表ですが、先日のLockpick_RCMとLockpickに対するDMCAテイクダウンと関連がありました。
Skyline開発チームのMark氏はDiscordで以下のような声明を発表していました。
任天堂は Lockpick RCMについてDMCAテイクダウン通知を発行しました。LockpickはSwitchから合法的にキーをダンプするためには非常に重要なものです。任天堂はLockpickがコピープロテクトを回避するためのもので著作権を侵害していると主張しています。我々は自分たちが持っているSwitchのキーをダンプすることで成り立つSkylineプロジェクトを続けることが任天堂の著作権を侵害する可能性があるという立場にいると考えました。
は5月8日付けでアーカイブ化(リードオンリーで今後更新されない)されています。
こうなると、他のSwitchエミュレータのyuzuやRyujinxはどうなるのかが気になります。
yuzuのリポジトリにはSkilineがyuzuのコードをベースにしていることが書かれているため、コードが著作権の問題なのであればyuzuも著作権侵害に当たることになりますが、問題になっているのは開発すること自体キーダンプが不可避であるためその行為を行っていることが著作権侵害に当たるかどうかですので、開発チームの判断次第と言うことになります。RyujinxはSkyline開発チームの開発中止声明後も開発継続の意向を発表したそうです。
そもそも任天堂のターゲットになっているLockpickやLockpick_RCMはそのHomebrew自体が目の敵にされているのではなくキーをダンプする行為自体のことを言っている、と考えるのが普通です。そうなるとエミュレータ開発で必須のデータの復号化にダンプしたその鍵を使っていることが「著作権を侵害している」となれば、エミュレータの開発に法的措置を講じられる可能性は否定できません。Skyline開発チームが選んだのは、リスクゼロの開発中止でした。
エミュレータの存在自体は決して違法ではありませんが、エミュレータを使って起動できてしまう海賊版ゲームは違法です。総合的に見るとエミュレータはグレーと言わざるをえませんが、そこではなくエミュレータ開発段階で必要になる暗号化解除のキー入手を著作権侵害と訴えてくる戦略を考えた任天堂の法務部は賢いと言わざるを得ません。
日本の著作権法 第百十三条の6には技術的利用制限手段(コピープロテクト)の回避を行う行為は、「技術的利用制限手段に係る研究又は技術の開発の目的上正当な範囲内で行われる場合その他著作権者等の利益を不当に害しない場合を除き、当該技術的利用制限手段に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす」との規定があります。
あくまでも日本の法律ではありますが、エミュレータ開発での技術的利用制限のためのキーの入手が例外規定に当たるのか当たらないのかがポイントになりそうですが、それに関わらず結果得ることになるエミュレータは海賊版ゲーム起動(著作権者等の利益を不当に害する)に繫がることになるので、時間と金を掛けて裁判で争う価値はないとの当事者の判断は残念ながら間違っているとは言い切れません。
怒ったのは任天堂アメリカで、日本の法務部じゃなく海外の法務チームが対応したようですよ