wololo.netで、wololo氏がPS VitaのePSPにも対応したHalf Byte Loader(HBL:PSP Homebrewローダー)向けオリジナルメニュー ‘wMenu’ をオープンソースとしてソースコードを公開したと発表していました。
このニュースは今週火曜日にwololo氏が記事を書いていたので、若干古い話です。ちょっと忙しかったので記事を書くのが後回しになってしまっていました。
今までwMenuはソースコードを公開しない非オープンソース、いわゆるクローズドライセンスでした。wMenuのすべての権利はwololo氏が所有していますので、wMenuを勝手に改良することはできませんし、ソースコードがないのでそもそもwMenuの改良版を開発しようと思ってもゼロからコードを書かなければなりません。結局は新規にメニューを開発せざるを得ないことになります。
今回wololo氏がソースコードを公開したことで、wMenuを誰でも改良して公開することが可能になります。一方で、wMenuのソースコードを利用して開発した場合にはGPLライセンスに基づき改良版もソースコードを公開しなければなりません。
wololo氏がwMenuをオープンソースにした理由は2つあります。1つは既に役目を終えたこと、そしても1つは、PS VitaファームウェアのアップデートによりHomebrewのインストールの仕方を変えざるを得ず、そのままでは今後利用できなくなったことが挙げられます。
おそらくwololo氏自信が多忙で、改良する時間が取れないためコミュニティに開発継続を促したいという思いもあることでしょう。
ここで、wMenuの歴史を振り返ってみます。
VHBLで利用されているwMenuは2010年6月27日に発表されました。ほぼ3年前です。PSP goが発売されてから半年後くらいの時期でした。
現在PS VitaのHomebrewローダーとして存在するVHBLは、Half Byte Loader(通称HBL)のVita版という意味が込められてVHBLと呼ばれています。しかし、wMenuが発表された頃には当然PS Vitaは発売されていません。当時を振り返るこの記事ではこの後HBLと呼称します。
さて、そのHBLではリリース当初からHomebrewを選択するメニューはありましたが、見た目が貧弱なテキストベースのものでした。
そもそもHBL自体がGPLライセンスに基づいて公開されており、ソースコードの公開が義務付けられているため、貧弱なテキストベースのオリジナルメニューを改良してもソースコードの公開は義務付けられます。過去にはそういったメニューを改善して公開されたりしていたこともあったそうですが、開発したディベロッパーがソースコードを公開したかったために結局改良版メニューを搭載したHBLと、本家が開発するHBLとは別進化をせざるを得なかった苦い時代があったそうです。
そこでwololo氏らが決断したのは、HBL本体とメニューとを切り離すというアイディアです。HBL本体はオープンソースですが、ソースコード公開についてメニューはそれを開発したディベロッパーの選択次第にしたのです。
そして、まず最初にwololo氏自身がカードゲーム”Wagic”で利用していたライブラリを使ってHBLのメニューをグラフィカルにした’wMenu’をクローズドソース(非オープンソースでソースコード非公開)として公開しました。
wololo氏自身がクローズドコードで公開することで、ソースコードを公開しなくてもいいんだよとPSPシーンに対して大きくアピールできたことになります。つまり、開発参入にソースコードを公開しなければならないという制限はないのでどんどん開発・公開してくださいねという意思表示をHBL開発陣サイドから世に問いかけることができたのです。
更にwololo氏はHBLメニューを募集するコンテストも開催し、広くHBLの存在をアピールすると共にPSPシーンへの開発者の新規参入を促しました。つまり、すべてはPSPシーンを盛り上げるためだったと言えます。wololo氏のシーンへの貢献度の高さはこういった地道な歴史を繰り返して来たことに尽きます。頭が下がる思いです。
現在はwMenuの他にもVHBLで利用できる各種メニューが開発されています。HBLからメニューを分離し、wMenuを世に出すことで代替メニュー開発にコミュニティで取り組めた結果です。こうした事実から、wMenuは一つの大きな役割を終えたと言えるでしょう。
そもそもHomebrewローダーからメニューを独立させるというアイディアはNoobz氏らがPSP初期に開発したeLoaderから得たものだそうです。こうして歴史が過去から未来へと繋がり続けているのがPSPシーンの強みだと思います。
最近盛り上がりに欠けるPS Vitaシーンですが、こうした小さなきっかけで再び盛り上がるようになることを祈ります。