刑期を終えた元Team Xecuterメンバー Gary Bowser氏の今

The Guardianで、Team Xecuterのメンバーとして逮捕・有罪判決を受けたあと刑期を終え今は自由の身となっているGary Bowser氏へのインタビューを行い今の状況についての報告をしていました。

2020年秋、Nintendo SwitchのMODチップなどを販売していたTeam Xecuterのメンバーが海賊行為で違法に利益を得ていた容疑で逮捕・起訴されました。主にウェブでの広報活動(ハッキング情報サイトMaxconsoleの管理人GaryOPAとして活動)を担いTeam Xecuterの顔となっていたGary Bowser(GaryOPA)氏は、刑事裁判で起訴事実を認め、損害賠償金450万ドルを自主的に支払うことになり、かつ民事裁判では1,000万ドルの損害賠償金を任天堂に支払うことで任天堂と和解することに同意しています。

しかし検察側は犯罪行為には必ず結果が伴うのだというメッセージを送る必要がある」として懲役5年の実刑判決を求刑し最終的には懲役40ヶ月が確定しました。

Gary Bowser氏はアメリカのシアトルにある拘置所に収監された後、模範行動により刑期を短縮され2023年3月28日に釈放されました。

今54歳のGary Bowser氏には残りの人生のすべてを使って任天堂へ支払う損害賠償金1,450万ドル(21億5000万円)があるだけです。個人で支払うにはあまりにも莫大な借金を抱えている状態な上にTeam Xecuterの他のメンバーは逮捕すらされていないどころかNintendo SwitchのFlashcart “Mig Switch”を販売(推測)して再び儲けようとしていますので、その点ではGary Bowser氏に少し同情はします。
The GuardianではそんなGary Bowser氏にインタビューを行いました。Gary Bowser氏の生い立ちから記事は始まっています。

Gary Bowser氏は子供の頃から電子デバイスいじりが大好きで、エンジニアだった父親から技術を学び(母親は彼が15歳のとき他界)、10代の頃からコンピュータビジネスに携わってきました。

その後インターネットカフェを経営しながらハードウェアの修理を行って生計を立てていました。2010年にはドミニカ共和国へ移住しますが、2000年代後半にTeam Xecuterと連絡を取るようになり、月に数百ドルの報酬でウェブサイトの更新やTeam Xecuter製品のテスターとのトラブルシュートの連絡係をやるようになりました。テスターからのフィードバックをTeam Xecuterの開発者に伝える仕事です。そのうちテスターとの仲介係としてTeam Xecuterに深く関わっていくことになります。

Gary Bowser氏が見側を拘束された日、彼は一晩中酒を飲んだあと寝ていた朝の4時に目が覚めたとき3人にライフルを頭に突きつけられていました。そのままピックアップトラックの後ろに載せられインターポール(国際刑事警察機構)の事務所に連行されました。
ちょうどコロナパンデミックの最中だったことから隔離措置等されつつ取り調べを受け、裁判で起訴され、最終的には実刑判決→刑務所→釈放となっています。

Gary Bowser氏は裁判で争う選択肢はあったものの全部で13件もの告訴全てで争うと時間も費用もかかる上に勝訴する確証もないため、罪を認めて最小限の容疑だけにしたほうが簡単だと彼は考えました。刑務所にいた間も時給1ドルで囚人のカウンセリングをしながら毎月25ドル(3,700円)を任天堂に支払ってきました。今は生活に必要な家賃などを支払った残りの収入のうち2〜3割を毎月任天堂に支払う事になっています。

今Gary Bowser氏は仕事を探しており、自身で運営するウェブサイトでウェブデザインのやウェブサイトのホスティングサービス、データベースのアップグレード、SEOマーケティングなどを手掛ける「Gary O.P.A.」を立ち上げ仕事を探しています。裁判で裁かれ有罪となった事実は残りますが、ビジネスを立ち上げて従業員を抱えるほど成功してきた過去の実績や、その中身はともかく実際Team Xecuterで活動してきた、司法の場で公になったため目に見える形になった実績と知名度はあるため、過去犯罪を犯した人物という色メガネで見られることはあまりないかもしれません。

Gary Bowser氏は著作権を脅かす海賊行為をする対する警告のために逮捕・起訴され、生涯かけても返せないかもしれない賠償金を背負うことになりました。Team Xecuterの他のメンバーの逮捕に躍起になっていない当局の様子を見る限り、任天堂の意向を反映した、犯罪予備軍に対する警告を出すという目的は達成したのでこの事件はこれで終わりかもしれません。Mig Switchで再び動きがあるのかどうかに注目です。