GTAのre3/reVC完全復活 DMCAテイクダウン問題のその後

TorrentFreakで、ReGTAチームによる『Grand Theft Auto III』をリバースしてPCでプレイできるようにしたプロジェクトre3と『Grand Theft Auto: Vice City』をリバースしたreVCがDMCAテイクダウンでコンテンツを削除されていた問題でReGTAチームがプロジェクト削除に対する異議申し立てに成功し、re3/reVCのコードを復元したことを伝えていました。

DMCA-Takedown-Notice

re3/reVCはTake-Twoが著作権を持つ『Grand Theft Auto III』と『Grand Theft Auto: Vice City』をリバースしたPC版で、その後VitaやSwitchなど数多くのプラットフォームに移植されています。re3/reVCは一部のゲームデータ(アセット)は含んでいないため動作させるには本物のゲーム自体が必要です。このプロジェクトにより、Take-Twoが対応しなかったプラットフォームで名作と言われているGrand Theft Autoシリーズがプレイできるというのが魅力です。

リバースにより完全に著作権を直接侵害するコピーが作られたわけではなく、素人目に見ても著作権を侵害していないのは間違いないと感じるところですが、パブリッシャーにとってはそうではありませんでした。実際DMCAテイクダウンを行ったのはTake-Twoとその親会社のRockstar Gamesでした。その主張はre3/reVCが明らかな著作権侵害に当たる、というものです。これにより一時著作権を侵害しているとしてDMCAテイクダウン(アメリカのデジタル・ミレニアム著作権法に基づいて、著作権侵害に当たるインターネット上のコンテンツを削除すること)によりre3/reVCのコンテンツデータが削除されていました。

その後異議申し立てが行われた一部リポジトリのみソースコードの公開が復活したりといった動きがありました。ただしこの時は異議申し立てが行われた場合著作権所有者側が2週間以内に法的措置をとらなかった場合にコードが復元されることになっていたため、それによりソースコード公開が復活しただけでした。

ReGTAチームはその後「フェアユース」を主張する異議申し立て戦術をとります。GitHub側がReGTAチームに法律専門家を紹介し、その協力のもとで異議申し立てを行いました。決してReGTAチームが単独で動いたわけではなく、弁護士と共に行動を起こしたことになります。

フェアユースは、GoogleのLegalヘルプに書かれているのでまとめてみました。

    フェアユースは著作権を制限する概念。フェアユースであると認められば著作権で保護されたコンテンツを利用することが可能と考えられている。フェアユースの判断基準には以下の4つの要素がある。
  • 商用か非営利かという利用の目的と、新しい表現や意味がオリジナルのコンテンツに追加されているかどうか、あるいはオリジナルのコンテンツのコピーにすぎないかどうかという特性。非営利、オリジナルな付加価値がある場合は認められやすい。
  • 著作権のある著作物の性質。事実に基づく作品のコンテンツは完全なフィクション作品より認められやすい。
  • オリジナル作品から引用するコンテンツがごく一部である場合は大半を引用する場合よりも認められやすい。
  • 作品の需要に対する代替品となり、著作権者がオリジナルの作品から受けることができる利益を損ねない場合は認められやすい。

ReGTAチームのプロジェクトリーダーであるaap氏によると、re3/reVCのような(sm64:スーパーマリオ64やdevilution:Diabloも含む)クラシックゲームは文化遺産であり、それらを保存して維持していくことの重要性を掲げ、ゲーム自体の不具合の修正や新たなプラットフォームへの展開を行っているためフェアユースと見なされるべきだとしています。そもそもプレイするにはオリジナルのゲーム本体が必要という仕組みのため著作権所有者の利益を損なうどころか利益に貢献していることにもなっています。

フェアユースであるというこの異議申し立てに対してTake-Twoは法的措置をとりませんでした。フェアユースについて認めたと解釈できます。2週間以内に法的措置をとらなかった場合にコードが復元されるため、re3/reVCのソースコードは晴れてGitHubに戻って来ることになりました。

今回はあくまでもGTAの著作権を持つTake-Twoが法的措置をとらなかったことによる結果であり、aap氏が言及したsm64の任天堂、devilutionのBlizzard Entertainmentについては全く別問題ですが、リバースにより完全コピーが作成されるようなプロジェクトではなく、少なくともオリジナルゲームが必要という作りになっている限りは著作権違反に問われる可能性は低くなったと言えるでしょう。

フェアユースの概念はアメリカの著作権法にはありますが、残念ながら日本の法律にはありません。日本で同じことをしても認められるとは限りません。

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