Wii UはHomebrewよりLinux fail0verflowの方向性

Team fail0verflowのmarcan氏がWii UモードのHomebrew Channelは不可能ではないがニンテンドーWii Uのfail0verflowとしての目標はLinuxを移植することだとブログで発表していました。

今回のmarcan氏の記事は非常に長文で、専門的な話を交えてWii Uシーンの解析結果と現状を伝えてくれています。興味のある方は熟読してもらうとして、この記事ではmarcan氏の伝えたWii Uシーンの今を独自の視点を交えて考察したものになります。翻訳ではありませんのでご了承下さい。

PS3シーンで著名なTeam fail0verflowは、その主要メンバーをWiiシーンの中心的存在だったTeam Twiizersのメンバーで構成しています。marcan氏はその中でも中心的な役割を果たしてきた人物であり、チームのブログでの広報活動もmarcan氏を中心に行なわれてきました。今回の発表もその中の一つです。

先日外付けUSBドライブからWii Uのバックアップ起動ができる光学ドライブエミュレーター”WiikeÜ”が発表されました。Wii Uシーンは過去の資産の再現と言えるWiiモード(vWii)でのHomebrew Channelを除けば、最初から違法コピー起動と表裏一体のバックアップ起動から始まることとなりました。

Wii U発売から半年以上経過した今まで、Team fail0verflowとして何も活動していなかったのかというと、そうではありません。

marcan氏によると、Wii U発売直後からハードウェアのハッキング方法の調査が開始され、現時点で既にexploitも発見されており、Wii U仕組みもかなり解明されています。

しかし、WiikeÜの登場のような、ある意味グレーなハッキングの方がもてはやされてしまうことも事実です。バックアップ起動よりも実は手間も時間もかかるHomebrew起動のような、より高度なハッキングのニーズ自体があまり高くないとmarcan氏自身感じているようです。

そのmarcan氏によると、バックアップ起動は「パッチするだけ」、Homebrew起動はEspresso(Wii Uで使われているCPUのコードネーム)で動作するようコードをゼロから作るというかなり手間のかかる作業です。

Espressoネイティブコーディングのような労を要する作業をするにも日常の仕事の合間にしか時間が取れず、最近ではAndroidなどのようなオープンな開発環境が整っているデバイスに開発者の興味が移ってしまっていることなどを理由に挙げ、ゲーム機のような「クローズドな機器」向けの開発への興味が薄れてしまっている、と開発者サイドからの意見として現状のハッキングシーンを評しています。

そのため、Team fail0verflowとしてはWii Uのハッキング目標をLinux起動に定めることにしました。LinuxであればWii Uのマルチコア向けに”移植する”ことになり労力的にも可能だからです。

勿論、Wii U Homebrewへの要望が大きく、更に開発に大きな進展でもあればそちらへ舵を切る可能性もあるとしています。しかし現状ではWii UへのLinux移植に比べてWii U Homebrewの方が諸々の条件面でハードルが高く、システムの脆弱性を利用するが故に基本的にイタチごっこになるのが目に見えていることもあり、そのイタチごっこ(場合によっては法廷闘争も含まれる)と永遠に付き合うモチベーションが保てないようです。

かつてはゲーム機が高性能デバイスの代表格で、そのクローズドなプラットフォームでHomebrewを動かすことが開発者としての腕試しの舞台でした。今ではAndroidデバイスやiOSデバイスのように専用ゲーム機並みの性能を持つ安価なデバイス向けとして、いわゆるHomebrew開発と同じ環境を誰でも持つことができてしまう時代になってしまいました。

Homebrewを発表することで名声を得ることができるのも開発者の特権ですが、既にGoogle PlayやApp Storeのような開発環境と名声を得る舞台がはじめから用意されている現在では、数年後にはスペック的に見劣りする上に、ハッキング対策というプレッシャーに耐えながら市場規模も小さい専用ゲーム機のハッキングシーンで頑張るのは確かに楽しくないかもしれません。

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