ツイッターで、Team AtlasNXがNintendo SwitchのオールインワンパッケージツールKosmosの開発を終了し、チームも解散すると発表していました。一体何が…裏事情に迫ります。
Kosmos has been archived and we're slowly disbanding AtlasNX. Thank you for everyone that supported us over the last 2 years.https://t.co/QifyEOhWim
— Team AtlasNX (@AtlasNX) May 12, 2020
Kosmosはアーカイブ化されました。AtlasNXはこれから解散します。2年以上にわたり支えていただいたみなさまに感謝いたします。
Kosmosは当初ペイロードhekateやAtmosphere / ReiNXを実行するために必要なファイルをまとめたオールインワンパッケージツールのSDFilesSwitchとしてリリースされていました。
tumGER氏はSDFilesSwitchという名称をあまり深く考えず命名したことを明かしており、その後Cosmos(コスモス: 宇宙)のギリシャ語であるKosmosに名称を変更し今に至ります。
GitHubのReleaseには、tumGER氏からのお別れの挨拶が掲載されています。そこを読むと、解散の事情が読めてきます。
昨年あたりからSwitchシーンでは実はもめ事を起こしており、その結果Team AtlasNXはKosmosを更新し続ける意欲をなくしてしまったそうです。一緒にやってきた仲間が他のシーンメンバーとの衝突に疲弊し次々とシーンを去り、最終的にはTeam AtlasNXを解散せざるを得なくなりました。残された選択肢は解散しかなかったということのようです。
Team AtlasNXは解散こそするものの、今までTeam AtlasNXが管理していたウェブサーバー上で必要なファイルを集めてダウンロードできるようにしたhttps://sdsetup.comはnoahc3氏が引き継いで管理をしてくれることになったため、HekateとAtmosphereを簡単に準備したいと考えているユーザーは引き続きhttps://sdsetup.comは利用できます。
Kosmosを使う上でhttps://sdsetup.comは非常にユーザーフレンドリーで便利だと私も思ったため、このブログでのSwitchハックチュートリアルではhttps://sdsetup.comからのファイル入手を前提で書いたくらいです。ただしKosmosの利用が前提になってしまいます。
Switchシーンでは無償で様々なツール(CFWであるAtmosphereやブートローダーペイロードHekateやペイロードローダーなど)が開発されているものの、多くの開発者が個別に開発をしているため情報が散乱しています。
詳しい人なら問題ないですが、初心者には何をどうしたらいいのかわかりにくいのではないでしょうか。
逆に結構なカネを取ることに私が懐疑的な見方をしているTeam Xecuterの有料CFWのSX OSの、私が考える唯一のメリットは、対価を払う代わりに得られる敷居の低さだと思っています。無料で手に入る環境だけでもSX OSと同等のことはできますが、初心者が最初にまたぐ敷居の高さは相当なものです。
そのような環境の中、Switchシーンの「無料で手に入る環境」の敷居の高さを一気に下げてくれたのが、必要なものを1ヶ所にまとめたKosmosです。
初心者ユーザーからするととてもありがたいであろうKosmosですが、Kosmosは極論すると人様が作ったものを集めてきて、設定ファイルでKosmosのブートロゴを表示するようにしてるだけです。
KosmosはGitHubで配布されていますが、ソースコードの中身は画像ファイルかiniやReadme的なテキストか、他のリポジトリから持ってくるだけのPythonスクリプトです。
それがKosmosの中身ですからKosmos内に納められたアプリケーションの開発者としては、ロゴのせいで見た目まるでTeam AtlasNXのKosmosがすべて開発したもののように見えるところに文句の一つでも言いたくなる気持ちは分かります。
海外の情報サイトの中で、Kosmosに厳しい見方をしているサイトにWiiDatabaseがあります。以前KosmosをWiiDatabaseのデータベースから消すと宣言している記事を見ましたが、そこで書かれていたKosmosをWiiDatabaseがdisった理由は以下です。
- 何の知識がなくてもSDカードにまるごとコピーだけで完結すると何も学べない。そんなものは改造とは言わない。KosmosではHekateとAtmosphèreが何なのかや、その関係性すら分からない。
- FTPサーバーやamiiboエミュレーションまで勝手に付いてくるが、KosmosではそれがCFWとは別のものだと誰も認識できない。必要なものをゼロから自分で設定すべき。
- そもそもKosmosのアップデートが遅い。Switchのファームウェアが更新されたら素早く対応するHekateとAtmosphèreを個別に更新すれば済むので本来Kosmosのアップデートを待つ必要がないのに「x.x.xのファームウェアでKosmosが動かない」というユーザーが増えるのはアホくさい。
言わんとしていることは、分かります。
他にも、WiiDatabaseによるとタイトルマネージャーTinfoilの開発者のblawar(Blake Warner)氏は特に敵意をむき出しにしていて、Tinfoilのv8.00以降にKosmosチェックを入れて、Kosmosを検出すると警告文を出してKosmosをアンインストールする機能まで実装してきました。
またSciresM氏やとm4xw氏と違法コピーに繫がるゲームカードインストーラーや署名パッチの存在で衝突していたようです。そんなことが続き、嫌気が差したTotalJustice氏やNicholeMattera氏、Joonie氏らがSwitchシーンを去ってしまいました。
Signature Patches(署名パッチ)はJoonie氏が手を引きHarukoNX氏が引き継ぐことになりましたが、今回のTeam AtlasNXの解散の話と無関係ではありません。
そしてTeam AtlasNXは解散宣言以外にもこんなツイートをしています。
We did not build nor do we take ownership of the build of Super Mario 64 for the Switch that was released. The build contains a readme in it's RomFS that associates the build with us, but no one on the team is responsible for it.
— Team AtlasNX (@AtlasNX) May 8, 2020
リリースされた『スーパーマリオ64』のSwitch版のビルドをしたこともなければ所有権だって我々にはありません。配布されたSwitchビルドのReadmeに我々が関与しているかのような記載がありますがチームは全くの無関係です。
なんでも違法コピー配布である『スーパーマリオ64』のReadmeにTeam AtlasNXのPatreonリンクがあり寄付しろと書かれてたらしいです。このツイートに嘘つき呼ばわりする人たちも沢山いて…
Switch版『スーパーマリオ64』の存在を私は把握していませんでしたが、彼らの主張が正しいのであれば可哀想だなとは思います。時系列から考えるとどうもその『スーパーマリオ64』事件がTeam AtlasNX解散の最後の決め手となるトリガーになったようです。
Team AtlasNXはよかれと思ってKosmosを出していたのだと思いますが、結果として反感を買って辞めざるを得なくなったことになります。ユーザーの立場からすればTeam AtlasNXを攻撃する正当性には疑問を感じるものの(違法コピー起動に繫がるものまで推奨するかのごとくの立場は批判されてしかるべきですが)、そもそもKosmosのブートロゴの存在には「君たち主張しすぎでは?」と私も疑問を抱いていました。
Kosmosのブートロゴなど用意せず黒子に徹していればこんな結果にはならなかったかもしれません。
さようなら、いままでありがとう。Team AtlasNXとKosmos。