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月額600円と発表の定額制ゲームサービス Apple Arcadeから考えるこれからのゲームとは

本日早朝にApple Special Eventが開催され、Appleのアーケードゲーム定額プレイし放題サブスクリプションサービス「Apple Arcade」が正式発表されました。

Apple Special Eventのメインは新型iPhone/iPad/Apple Watchあたりなのですが、このブログのテーマには合わないので割愛します。焦点はゲームサービスであるApple Arcadeです。

以前からドルベースの価格は発表されており、日本でのサービス開始日と日本円の価格設定が最も知りたい情報でした。「Apple Arcade」は月額4.99ドルなので日本円ではApple Musicの例から480円ではないかと当時書きましたが、思いっきり外しました。1ドル120円換算してきたのか消費税増税分上乗せしてきたのか分かりませんが、価格設定は月額600円になりました。

9月20日からサービス開始で1ヶ月間の無料トライアルがあるので実際課金されるのは消費税増税後の10月以降になります。

現在日本語のニュースリリースに加えてApple Arcadeの日本語サイトも公開されています。

サービスローンチ時には「100を超えるここでだけ遊べる新しいゲームのカタログ全体に無制限にアクセス」でき、「他のモバイルプラットフォームやサブスクリプションサービスにはないゲームをプレイ」できることが特徴で、「今後数週間にわたって新しいタイトルが登場し、ゲームは毎月追加」されます。「すべて広告が表示されず、追加購入も不要」というのがうれしい情報ですね。

実はApple Arcadeは公式サイト内で「9月20日登場」と「9月19日(木)にiOS 13とともに利用可能」との2つの日本語表記があります。日本時間だと実際には9月20日というのが正しいと思われるのでここではそう表記しましたが、もしかすると19日のかなり遅い時間ならサービスが開始されているかもしれません。

Appleが手がけるゲームプラットフォームなんて大丈夫だろうかと心配する方がいるかもしれませんが、すでにiOSのApp Storeでの運営実績は十分ですので心配には及ばないでしょう。コンテンツを引っ張ってくる力も備えています。ただし、BDに収録されるような据え置きゲーム機向け大型コンテンツと同等クラスのゲームがApple Arcadeで用意されるかどうかはサービスが始まってみないと分かりません。

携帯ゲーム機の市場が縮小し、iPhoneに代表されるモバイルデバイスにゲーム環境を持って行かれてしまっているという事実を踏まえるとApple Arcadeは今後のゲーム機の主流になる可能性を秘めています。ディベロッパーがゲームを無料で配信する代わりに広告を表示するビジネスモデルよりもApple Arcadeの方がディベロッパーの取り分が大きいならば、もしかすると広告によるゲーム無料配信ビジネスが崩壊してしまう可能性もあります(実際にはありえませんが)。ここで問題になるのは、ディベロッパーへの売り上げ配分の方法でしょう。

ただしFree to Play、つまり基本プレイ無料の課金で儲けるタイプのゲームはApple Arcadeにそぐわないので今まで通りApp StoreからiOS向けにリリースすることになります。課金で儲けるタイプのゲームはサーバーを運営管理するコストやAppleにもうけを持って行かれる割合など様々な要因があるので一概には言えませんが、Apple Arcadeでの配分の方がうまみがあれば課金タイプのゲームも淘汰されてしまうかもしれません。細々と無料範囲内でプレイしているユーザーにはうれしくない話です。

Apple Arcadeの契約者数が多くなればなるほど、多くプレイされるゲームにはそれに応じた配分が当然分配されるはずです。そうなれば広告クリック数よりは確実に多くの収入が見込めるでしょう。逆に言えばそれを実現できることをアピールしないとAppleもディベロッパーをApple Arcadeに引っ張ってこれません。

また、Apple Arcadeとしてゲームをリリースするには審査が必要です。サービスローンチ時は既に実績のあるディベロッパーにAppleから声をかけてラインアップを揃えたのだと思いますが、一個人が開発しているようなゲームに関してはApple Arcadeの対象になることは今後もかなり難しいのではないでしょうか。裏を返せば「クソゲー率が低い」ことがApple Arcadeの特徴になるかもしれません。

もう一つの新規ゲームサービス、ストリーミング技術を使うGoogleのStadiaですが、9TO5GoogleによるとApple Arcadeの正式発表に歩調を合わせるかのようにGoogleのStadia担当幹部のJohn Justice氏が詳細を小出し発表していたようです。

内容を簡単にまとめると
・ゲームには無料体験版が存在する(サービス開始時にはサポートされない。ディベロッパー側に体験版を用意する/しないを決める権限があるのかどうかすら不明)
・コントローラーにはジャイロがない(開発者側から要求されなかったので付けなかった)
・コントローラーのバッテリー持ちはDualShock 4より上、Switch Pro Controllerより下
・ファミリー共有を計画。今後数ヶ月でディベロッパー側と交渉がまとまりそうなので来年頭には。
・ペアレンタルコントロールも来年頭には。
・なんと、ゲームMODサポート
・クロスプラットフォームサポート

となっています。
慌ててApple Arcadeの後追いをしたような匂いを感じるものもありますがゲームMODサポートは驚きです。ゲームデータを改ざんすることを公式にサポートするゲームを出すわけですから、少なくとも一定のルールの下で行うだけのものにしかできないでしょう。そうでないと動作保証ができません。

Apple ArcadeもStadiaもユーザーをどれだけ囲い込めるかが成否を決める決定打ですのでサービス開始前の今が一番の勝負時でしょう。その点で言えば事前に情報を小出しにして情報を市場に与えておいたところで、ここ何年も世界的に注目を集めることが決まっている新型iPhone発表・発売に時期を合わせたApple Arcade正式発表というしたたかな戦略がStadiaを完全に上回っています。Stadiaは誤解を恐れずに言うと、私の中でもサービスがあるという事実以外の存在感が完全に薄くなっていました。今はApple Arcadeの正式発表でStadiaの情報エリアが上書きされて消去される寸前でした。みなさんもそうじゃないかと思い、最後にStadiaの情報を少し入れてみました。ユーザーとしてはただでさえ少ないゲームプラットフォームの選択肢は多い方が良いので、AppleにもGoogleにも頑張って欲しいですし、既存のソニーや任天堂、マイクロソフトにも踏ん張って欲しいと思っています。

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