TorrentFreakで、任天堂がGitHubに対しDMCA削除通知を発行し、yuzuの派生含む8535ものリポジトリを削除させたことを伝えていました。
任天堂がNintendo Switchエミュレータyuzuの開発チームを提訴しましたが、yuzu開発チームは司法の場で任天堂と争う道を選ばず240万ドル(3.6億円)を支払い和解に応じ、yuzu(とベースになったCitra)のリポジトリを削除しました。
しかしyuzuはオープンソースで開発されていたためソースコードは広く公開されていたことから、オリジナルyuzuがなくなっただけでyuzuのコード自体までは消すことまではできていませんでした。yuzuを完全に一掃するのは簡単なことではありません。
その後任天堂はまずyuzuのフォーク(派生)としてyuzu削除後に作られたSwitcエミュレータSuyuとSudachiのコミュニティであるDiscordを閉鎖に追い込みました。
そして4月29日に任天堂はGitHubに対して一通のDMCA通知を提出しました。
この通知を受け、GitHub側は
「申し立てのあった著作権侵害コンテンツを含むリポジトリは100を超えており、フォークも親リポジトリ(yuzu)と同程度に著作権を侵害しているとの任天堂の申し立てを受け、GitHubは親リポジトリを含む8,535のリポジトリの削除通知を処理しました」
として、その8535ものyuzuのフォークリポジトリを一斉削除したのです。
エミュレータ自体は違法ではありませんが、yuzuに関しては海賊版ゲームがプレイできないよう暗号鍵を使用してデータを読み取れないようにするなどのセキュリティを回避してゲームをプレイできるよう設計されているため、技術的保護措置を違法に回避していると任天堂は主張しています。
この主張は法的に認められたものではありません。任天堂はyuzu開発チームと法廷で争っていないためです。しかしDMCA削除通知によってGitHubはコンテンツを削除することになります。削除されたコンテンツを復活するには削除された側が違法ではないことを証明する異議申し立てをする必要がありますが、そもそもオリジナルのyuzu開発チームは著作権侵害を認めて240万ドルを支払っていますから、その事実を分かった上で任天堂に対して異議申し立てをするのはリスクが高すぎます。おそらく誰もやらないでしょう。これでyuzuは完全に息の根を止められました。
任天堂はyuzuを一掃した次のターゲットとして、Switch向けFlashcartのMig Switchに狙いを定め、Mig SwitchとMig Dumperの販売代理店サイトをGoogle検索から削除しようとしているようです。
現時点で任天堂は75のMig Switch販売店サイトのドメインを検索のインデックスから削除しようとしています。通常のDMCA削除通知ではなく、対抗通知プロセスが不要のDMCAのDRM迂回防止(技術的保護手段の回避禁止)条項(anti-circumvention)というものを使用しました。
Nintendo DSの時代に任天堂はマジコン(Flashcartの通称名)と呼ばれる装置を輸入販売していた業者への販売差し止めと損害賠償を求めた訴訟で全面勝訴し、日本で輸入できないよう法的措置を取ったこともあります。販売網にターゲットを絞って主要各国で同じような措置を取ったことからある程度広く流通することは防止できました。しかし法的措置は相手を特定する必要があることからすべての流通まで措置を行き渡らせることは不可能なため、今でも海外ではDSのFlashcartを販売しているところは存在します。
Mig Switchについては販売店が検索に引っかからないようにしたことから、任天堂は今回もまずは販売網をターゲットに法的措置を取る方針のようです。