Real Soundで、任天堂が2画面折りたたみ式の『Nintendo Switch 2』を発売するとの複数情報が海外でリークされたと伝えていました。(オレクラスさん、ユーフェミアさん情報ありがとね)
このニュースはYahoo!ニュースに掲載されたため、かなり話題になったようです。
その内容は
- Nintendo Switchに新たにプレミアム・バージョンの開発が進められている
- Nintendo 3DS XLのように2つ目のスクリーンがあり、折りたたみ式
- ハンドヘルドやドッキングではなく、アップグレードされた異なる類のコンソールの可能性も
- 早くとも2021年以降のリリースか
というものです。折りたたみ式はセンセーショナルですね。
2画面モデルをスクープとして扱い、こんな文章も。
任天堂はこれまで、デュアルスクリーンやセカンドスクリーンをデバイスに使用しており、Nintendo DSや3DSハンドヘルドは成功を収めた。またWii Uでは、テレビコンソールとタブレットゲームパッドを組み合わせた。
噂されている新たなコンソールは、次世代のSwitchなのか、それともSwitchのゲームに対応する次世代のハードウェアなのだろうか。
ベースとなる「海外でリークされた」「複数の」情報源としてReal Soundは
- 1: 『Tom’s guide』
2: 『TechRadar』
の2サイトを列記しています。
そもそもDS/3DSの後継を連想させる2画面Switchというところに個人的には大いに違和感を感じ、真相を探るべく調べました。
情報ソースその1『Tom’s guide』
まず、「Nintendo Switch 2が登場する?スクリーンが2つの可能性」と報じている『Tom’s guide』
その根拠にしているのが、「(自称)リバースエンジニアで情報セキュリティーリサーチャーというMike Heskin氏」のこのツイートです。
Firmware 10.0.0 adds preliminary support for a new hardware model: "nx-abcd".
3 of the 5 new DRAM profiles are for this new hardware type and there's evidence of a secondary display of sorts being added exclusively on this model.
( ͡° ͜ʖ ͡°)— Mike Heskin (@hexkyz) April 14, 2020
ファームウェア 10.0.0では新ハードウェア”nx-abcd”の準備サポートが追加されています。
新しい5つのDRAMプロファイルのうち3つはこの新ハードウェアタイプのためのもので、このモデルにのみセカンダリーディスプレイ的なものが追加されている明らかな形跡があります。
え?
Tom’s guideが「(自称)リバースエンジニアで情報セキュリティーリサーチャーのMike Heskin氏」と呼んでいる人物は、このブログではおなじみの、Switchのカスタムファームウェア開発にも携わっているSwitchシーンでは著名な(もっと言うとVitaシーンのMoleculeのメンバーでもある)開発者hexkyz氏ではないですか。
Tom’s guideはそもそもhexkyz氏のことをほぼ知らない状況で紹介した上で、そのhexkyz氏のツイートを情報のベースとして伝えていることが分かりました。
Switchのファームウェア10.0.0の時にSciresM氏のツイートを引用する形で「5 DRAMを追加したモデルのサポートが追加された」と私は書きましたが、hexkyz氏の先のツイートはSciresM氏の翌日にツイートされています。
情報ソースその2『TechRadar』
もうひとつの情報源である『TechRadar』。
この記事は2週間ほど前の記事で、書かれている内容はSwitchの開発コードネームから予測する将来モデルの話です。
Real Soundは『TechRadar』の記事から、噂の高性能版『Switch Pro』の存在の可能性に言及しつつもハンドヘルドやドッキングではなく、nx-abcdという新たなSwitchのコードネームの存在の発覚から異なるタイプのSwitchがお目見えする可能性を示唆しており、過去の任天堂のグラスなしに立体画像を作成する特許がSwitchに関連するのだろうかと書いています。
TechRadarの内容は、先の『Tom’s guide』と同じhexkyz氏のツイートについても言及していますが、メインはSwitchの開発コードネームから予測する将来モデルの話です。
そのコードネームの話がこれです。
- Icosa – Switch発売時のモデル [nx-abca2] 20nm Tegra X1
- Iowa – バッテリー持続時間が長くなった新モデル [nx-abca2] 16nm Tegra X1とMarikoチップ
- Hoag – Switch Lite [nx-abcc] 16nm Tegra X1とMarikoチップ
- Copper – 不明 [nx-abcb]
- Calcio – 不明 [nx-abcb] 16nm Tegra X1とMarikoチップ
IcosaとIowaの頭文字の’I’はTVモードと携帯モードを持つ統合モデル(プラットフォームは [nx-abca2]で同じ)、HoagのHはハンドヘルドのHで携帯専用モデル(プラットフォームは[nx-abcc])、CopperとCalcioのCはコンソールのCで据え置き専用モデル(プラットフォームは[nx-abcb]で同じ)ではないかと考えられています。
そしてCalcioはゲームカードのサポートがないのでデジタルオンリーのモデルではないかとしています。
Calcioは8.xのアップデートで内部に追加されたモデルのため開発中であることを伺わせます。
ここに、10.0.0で新たに追加されたnx-abcdというプラットフォームが追加されます。これについては詳細は不明ですが、nx-abc”d”という順番からして噂の高性能モデル「Switch Pro」で、Calcioで開発中という可能性が見えてきます。
この話、TechRadarの記事を読んでいくと更に元にしている情報へたどり着きます。それはReseteraという海外のゲームフォーラムの、JershJopstin氏という人物の投稿になっていました。
そのReseteraのフォーラムの投稿を探っていくと、今度はJershJopstin氏自身がこれまた情報ソースについて「この動画の1:02:30から1:15:00のところ」と書いています。
動画の投稿者…え?SciresM氏…
これ、SciresM氏が9.2.0がリリースされたときにTwitchで調査して解説したストリーミング放送です。
これではっきりしました。
そもそも全部Switchシーンのhexkyz氏とSciresM氏がAtmosphere開発のために解析したSwitchファームウェアの話が別方向へ拡散した結果話がねじ曲がり、日本のYahoo!ニュースに掲載されたときには海外で複数情報がリークされたことになっているのです。そして過去の2画面ゲーム機に勝手に紐付けた結果が「2画面折りたたみ式Switch」。
明らかなフェイクニュースです。
一体どこがリークですか!!!
聞いて呆れるわ…
ちなみに、全部Switchbrewに書いてあるよ
Switchシーンのみなさんは、調査した結果をSwitchbrewにまとめています。今回の話も全部Switchbrewに書かれています。
「海外で複数情報がリーク」が聞いて呆れます。
Icosa、Iowa、Hoag、Copper、Calcioはハードウェアを表すとされています。またnx-abxxというのは、プラットフォームを表すコードネームです。
CopperとCalcioのnx-abcbはプロトタイプユニット、となっています。HDMI出力を持つ別のハードウェアを実装していることも書いてあります。それなら据え置き専用というのも納得です。デジタルオンリーの正体はこれです。
2020年3月期経営方針説明会/第3四半期決算説明会の中で任天堂の古川社長が2020年内にはNintendo Switchの新モデルを発売する予定はないことを明言しています。
SciresM氏は任天堂が開発しているらしいCalcioがProモデルではないかと言っていますが、話を統合すると開発しているのはまだプロトタイプで市販型まで行き着いていないことになります。そりゃ発売は先になりますね。
また、2画面という想像上のデバイスに結びついたhexkyz氏の「セカンダリーディスプレイ」ですが、hexkyz氏は
“a secondary display of sorts”(一種のセカンダリーディスプレイ:私はセカンダリーディスプレイ的なもの、と訳しましたが…)
と書いています。あくまでもセカンダリー(2つ目のディスプレイ)ですのでDS/3DSやWii U GamePadのような「2つのデュアルディスプレイ」という方向に捉えるのは誤りです。
私は可能性の一つとしてSwitch Proモデルは携帯モードでHDMIにも同時に出力するとか、SwitchディスプレイとHDMI出力それぞれ別画面が出せて、1台で快適な2Playができるとか、そんなおまけ機能(グラフィック機能強化されてるからできるとか)じゃないかと適当なことを予想しておきます。
なお、余談ですがYahoo!ニュースに掲載されるのは話題性があるからピックアップされたのだと思っている方、それも間違いです。
記事提供するメディアとYahoo!には契約が存在し、PVに応じてカネが支払われます。掲載されているニュースは契約しているメディアがYahoo!に出稿したものです。いわゆるコンテンツのマネタイズの手段として利用されています。既存のテレビや新聞、週刊誌系のアイコンが出ているのはそのせいです。ただそれだけです。
話題性関係ないです。Real Soundが話題性をねつ造しただけです。
なお、私は契約なんてしていないので例えばこのブログの記事がYahoo!ニュースに掲載されるようなことは100%ありません。