Engadgetで、SCEがPlayStation Suite SDKのオープンベータ版を4月に公開することを発表したことを伝えていました。
Android端末やPlayStation Vitaで初代PlayStation等のタイトルを楽しめるようにするPlayStation Suiteでは、SCEが提供するライセンスを受けたPlayStation Certified認定端末のみで動作するゲームなどのアプリケーションを開発するための開発キットPlayStation Suite SDKが一般開発者向けに提供されることになっていました。
PlayStation Suite SDKは昨年の秋にベータプログラムの参加受付が開始され、いわゆるクローズドな環境での参加が可能になってはいましたが、今回はSCEが目指す”オープンなシステム上でプレイステーションの世界を提供する”環境の構築に向けて更に一歩進みオープンベータ版として提供が開始されることになります。
オープンベータ版は誰でも無償で入手することが可能ですが、正式版は年間99ドルで今年後半に公開予定となっており、所定の手続きを経ることでソニーのプラットフォーム向けに販売できるようになるそうです。
年間99ドルという価格や手続きが必要なところはまるでアップルみたいですね。
XperiaシリーズのスマートフォンやSONY TabletなどのAndroid端末の他にPS VitaでもPlayStation Suite SDKで開発したアプリケーションが動作することになります。ベータ版SDKに使用期限があるのかやPlayStation Storeで販売しなければ無償でSDKが利用できるのかについては不明です。その他正式版についての情報などは今後特設サイトで公開される予定だそうです。
気になるのは一般開発者向けに公開されるSDKというところで、いわゆる自作アプリケーション(Homebrew)を、デバイスをハッキングすることでインストールして起動できるようにしてきたコミュニティがSCEの提供するオープンな環境へ移行できるようになるのかどうかです。
違法コピー問題との抱き合わせでなにかと不便を強いられてきたHomebrewコミュニティが、SCEの「対策」を気にせず自由にアプリケーションを開発できる環境へ移行できるのですから、当然コミュニティの質が変わってくる可能性を秘めています。
このコミュニティの質の変化というのはつまり、年間99ドル払うことなく開発したアプリケーションを自由に配布できるようにしたいと考える開発者と、それを入手したいというユーザーとの利害が一致し、今のAndroid端末の非公式マーケットや、iOSのCydiaによるアプリケーションの配布と、それをダウンロード/インストールできるようにするためのハッキングを目指す方向へと変わってくるかもしれないということです。
PkayStation Vitaを例にとっても、PSP SDKで開発したHomebrewを起動させるためにVHBLというHomebreローダーが先日公開されたばかりですが、年間99ドルでHomebrewを公式環境と正規の方法を利用し起動できるようになるわけですから、わざわざハッキングまでしてHomebrewローダーを起動できるようにする必要がなくなってしまいます。
今までは公式のSDKがPlaySytationと名の付くデバイス向けに一般配布されてきませんでしたので、コミュニティでSDKを作りそのSDKを用いて開発したものをインストールできるようゲーム機をハッキングしてきました。そのプロセスを楽しむのもコミュニティの面白いところでしたが、もしそれが無くなるとしたら少し寂しい気もします。