決算説明会で語られた任天堂の現状打開策

任天堂が、2014年5月8日(木)に行われた決算説明会の社長説明資料を公開していました。

全体的には2014年1月30日の第3四半期決算説明会で経営方針として説明したものに具体性を付け加えて説明したような内容が目立ちます。

業績不振の責任を痛感 今後の回復こそ責務として辞任を否定

昨年度3月期に464億円の赤字となった任天堂は、岩田社長が「結果を出せなかったことについては、責任を痛感」としながらも、「今後ビジネスの勢いを回復させることこそが、何よりの責任」として辞任を否定しています。

現状のWii Uの販売状況はヒットタイトル不足が原因だと私は見ていますが思わしくありません。

岩田社長は業績不振の責任を取って辞任すべきという意見も見受けられますが、不祥事を起こしてトップが責任を取るならまだしも、ニンテンドーDS/Wiiで今の任天堂を築いた実績を短期間の業績不振というだけで外野から責任を求めるのは筋違いです。岩田社長自身が自ら身を引くのは、自分の時代が終わったと自覚するか、後進に道を譲る決意をするかのどちらかのタイミングでしょう。

E3で発表される提案

具体的な内容まで言及されていませんが、任天堂のビジネスを発展させて行く上で必要な提案がE3で発表されます。昨年はE3での大規模カンファレンスを見送ってニンテンドーダイレクトで新タイトル発表などを行った任天堂ですが、今年はオーソドックスにE3でのカンファレンスを重視するようです。

最も重要な課題は世界的に販売不振のWii Uのテコ入れ策ですが、Wii U GamePadの活用を中心に据えて下記のようなアピールをE3で行うと思われます。

Wii U本体の更新

岩田社長は、今年の夏までにWii U本体の更新でリリースするシステムで「高速起動メニュー」を実装することを明らかにしました。

現在はシステムへの組み込みがほぼ終わり、実機で動作するところまで開発が進んでいるようです。

「スマートデバイス」スマートフォンやタブレットの任天堂としての活用提示

市場や株主からの「任天堂は、自社コンテンツをスマートデバイス(スマートフォンやタブレット)に供給すべき」との意見を受けて、任天堂としての概要提案がなされました。スマートフォンでマリオをプレイするような、自社デバイス以外でのコンテンツ提供ではなく、あくまでも自社デバイスの販売に繋がるような方策を模索するようです。

まず、年内になんらかのアプリをリリースすることが明らかにされました。具体的な内容ではなく、任天堂としてどういう方向性で行くのかが分かるアプリという曖昧な表現で語られています。

『マリオカート8』にある自分のレースのハイライトシーンの映像を投稿してインターネット上で共有することができるソーシャル機能「マリオカートTV」という機能をスマートデバイス含めた媒体で閲覧できるWebサービス「マリオカートTV(仮称)」を開始することが今回発表されました。年内にリリースされるのはそういったサービスを利用するためのアプリではないかと思われます。市場の要求とはかなり方向がずれているのが気になります。ソニーのリモートプレイのような、スマートデバイス経由で任天堂のタイトルを楽しめる(本体をリモートするだけでスマートフォンへのコンテンツ提供とは異なる)サービスの方が市場の要求に近いのではないでしょうか

Wii U GamePadのNFC機能活用

現行ゲーム機で唯一、NFCを搭載しているWii Uですが、実際NFCを活用している状況とはほど遠いのが現状です。
しかし、今夏の本体更新でSuica決済ができるようになります。Suica決済に対応することで、Suicaと相互利用できる交通系電子マネーも利用できるようになります。つまり、Wii U本体で直接決済できるという画期的なプランです。

とは言っても、インターネット経由でクレジットカードを利用している現在、画期的なメリットがユーザー側に生まれる程ではないでしょう。ゲーム機として画期的であることは間違いないですが、待機中にビットコインの採掘をして最終的には換金することでコンテンツが購入できる方が余程画期的ですね。

NFC推進派の任天堂としては、Wii Uより台数の多いもう一つのプラットフォームであるニンテンドー3DSを抜きにしてNFCの普及は図れません。当然ニンテンドー3DS向けのNFCリーダー・ライターも開発しているそうです。もし3DSのマイナーチェンジがなされるとすれば、NFC機能を搭載している可能性が高そうです。

またNFCの展開としてビデオゲームと連動するNFC機能を埋め込んだフィギュアを年末商戦に向けて発売するそうです。詳細をE3で発表するとしています。任天堂キャラクターを活用したライセンス供与によるビジネスモデルも新たに展開し、年内をメドに内容を公表するようです。

次世代機は開発しているが、方向性に迷いはない

この話は質疑応答で岩田社長が述べたものです。任天堂が巻き返しを図るなら次のハードウェアで、との期待が高まっているので次世代機投入の前倒しがあるのではないかとの見方に対し、次世代機開発の事実は認めているものの現行機の満足度が高くないと次世代機は受け入れられない、としてあくまでも現時点では現状の立て直しの重要性を挙げています。

現行機が不調なことで次世代機のコンセプトや方向性に迷いが出てもおかしくないですが、その点に関して岩田社長は「次に何をつくっていいか分からなくて、袋小路に入り、困り果てているということはない」「自分たちなりにこういう方向でやっていこうということをある程度決めている」と、確固たる意思の上に次世代機の開発を行っていることを強調しました。

コンテンツ提供力が問われる

決算説明会は任天堂の株主や投資家向けコーナーで公表されていることからも分かる通り経営面からの切り口で語られます。

消費者、ゲームに関して言えば一般ゲームユーザーとの思惑とは少しずれているのは仕方がないことかもしれません。極論すれば利益さえ出るのであればビジネスとして成立しますから、そこにはユーザーがプレイしたいゲームのあるなしはあまり関係がないのです。

不振だと言うWii Uもユーザーに受け入れられるコンテンツさえあれば、ユーザー的には満足するのではないでしょうか。個人的には面白いゲームがプレイさえできればそれで十分で、NFC決済機能やマリオのフィギュアなんてどうでもいいとまでは言いませんが、多分使わない買わないになると思います。

スマートフォンのゲームでも奥が深いコンテンツが楽しめるようになった現在、結局問われるのはコンテンツの提供力です。面白そうだと思ったコンテンツが任天堂のプラットフォームにあれば、購買意欲が湧くというものです。任天堂イチオシのNFCも、それを活かした魅力的なコンテンツさえあれば結果的に任天堂のゲーム機も爆発的に売れるのではないでしょうか。少なくともSuicaはコンテンツではないので、決済以外の展開に期待したいところです。

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