Kotakuがwololo氏へメールでコンタクト インタビュー記事を掲載

Kotakuが、VHBLをリリースしたwololo氏へ(メールで)インタビューを行った内容を記事として掲載し、Kotaku Japanがその内容を日本語にして掲載していました。

Kotaku Japanの記事は当然日本語で書かれていますが、その記事を読んでまずwololo氏がそんなこと言うはずがないのでおかしいと感じる部分がありました。Kotakuの原文を読んで初めて翻訳がおかしいことに気が付きました。

おかしいと感じたのは以下の2つです。
1) 事実誤認
2) そもそも日本語への翻訳がおかしい

最大限Kotaku Japanの日本語記事の翻訳をベースにした記事は尊重した上で、事実誤認を修正した上で私ならこう訳す、としたものが以下になります。

[インタビュー] PlayStation Vitaをハックした日本在住のフランス人ハッカー、Wololo氏

これは良いハック?悪いハック?

以前PS Vitaで『DOOM』を起動させたハックが以前話題となりましたが、同じ脆弱性を利用して自作アプリの起動を可能とするエミュレータ自作アプリローダーを制作したのがハッカーWololo氏。米Kotakuのナカムラ記者がWololo氏に突撃取材を敢行、ハッキングへの愛と情熱、そしてソニーへの不満をも赤裸裸に語っています。

米Kotakuのコメント欄には猛烈な批判が集中していますが、Kotaku JAPAN読者の皆さんはどうお考えになるでしょうか?

ハッカーやモッダーにとって、SonyのPSPはそのハックし易さから格好の材料となってきました。必要な知識さえあれば、改造データ、自作アプリ、そして海賊版をもプレイすることが可能。そんなPSPの弱点を受け、PS Vitaはハックや改造に対する強固な対策が施されています。

しかし先日、日本在住のハッカーがPS Vitaの脆弱性を利用して自作アプリの起動に成功、ソニーは早くも強烈な一撃を食らってしまいました。そのハッカーの名はWololo氏、本記事では彼へのインタビューをお届けします。

Wololo氏は日本在住のフランス人、プログラマーとして4年の経歴を持ちます。本職はプログラマー、ハッカーとしては4年の経験を持つベテランの部類でハッカーとしての経歴は、その経歴は2007年にPSPの脆弱性を利用して起動させた自作のカードゲーム『Wagic』を制作した事に始まります。ハッキングの動機は、手探りで実験を繰り返して行く楽しさ、メールによるインタビューで彼はそう語ります。

「その装置本来の機能ではない何かを成功させた時の興奮に尽きますね。特に、何百時間もの失敗を経てHello Worldの起動に成功した時にはアドレナリン出まくりです。」

今回のVitaハックにおいてWololo氏が自作アプリを起動させるために利用した脆弱性とは、実はPS VitaのシステムではなくPSPエミュレータ上のもの。これを発見したのはWololo氏と共同でPS Vitaハックに取り組んでいたTeck4氏。多くのPSPゲームに存在する、いわゆるバッファオーバーフローの脆弱性を突いて自作アプリを走らせるものなので、厳密に言うと「Vitaハック」ではありません。

「今回のVitaハックは実質的にPSPハックとほとんど同じものなので、『簡単だった』と言えます。」

この情報が公開されるや否や、Vitaハックのキーとなる某ダウンロード配信ソフトはPlayStationストアから削除されることに。ソニーのこうした動きは理にかなっていると同時に、過剰反応と言えなくもありません。WolooWololo氏によると、彼はこの作品のタイトル名を挙げただけで詳しい情報は公開しなかったものの、ソニーはすかさず反応を見せたそう。

「ソニーが直ちにソフトを削除して利益を損ねる必要があるほど自分の評判が高いとは知りませんでした。僕が嘘をついていた可能性もあるわけですから、そこまでする必要があったのでしょうか。」

ソニーのこうした反応や、Vitaに施されている海賊版対策は少々「やり過ぎ」であり、ユーザーに不自由を強いるものだとWololo氏は主張します。

「データの転送に必要なコンテンツ管理アシスタントが特にそう。ファイルをコピーするのに常にネットに接続している必要があるなど、面倒で邪魔くさいんですよ。」

こうした措置は海賊版対策を目的としたもの。Wololo氏はハッキングと海賊行為を明確に区別した上で、自身も海賊行為には反対であるとし、むしろソニーが自らの製品を守ろうとする姿勢には理解を見せています。しかし、ソニーの行き過ぎた海賊版対策こそがユーザーを海賊行為を招く一因にもなっているのだ、そう残念そうに語ります。

「その良い例が、PS3でのDVD再生です。日本版PS3はPAL方式をサポートしていないんです。僕がフランスで購入したDVDはハードではなく、ソフト上の制約によって日本版PS3では再生できません。

自分が正当に購入した映画がソニーのせいで見れないとなっては、つい海賊行為に走ってしまうのも仕方ありませんよね。自分で正当に購入した映画を見ることより、海賊行為のほうが簡単にできるようになってるなんて本当におかしいですよね。これらのDVDは息子のために購入したアニメです。こうしたアニメを見て多少でもフランス語を学んで欲しいと思うのですが、PS3で再生できないできないので断念せざるを得ません。」

Wololo氏はソニーのセキュリティー対策には賛同しないものの、製品としてのVitaには多大な期待を寄せているし、これからも改造を続けていくとのこと。ソニーからの反撃を恐れていないのか、という質問にはこう答えています。

「僕の行為についてソニーからコンタクトがあった事はありませんし、今のところは心配していません。ソニーにとって僕は小物に過ぎないのでしょう。

もちろん自分の行為が法に触れるものだと感じることがあれば、その時は辞めるつもりです。でも時には『正当性』と『違法性』の区別が曖昧になることもありますよね。『正当だと感じること』と『合法であること』とは全く別ものだと感じることがあります。」

Kotakuの記事を日本語で書いた上原理氏はうまくKotaku原文のニュアンスを日本語に込めて翻訳しているとは思いますが、まずwololo氏が

『つい海賊行為に走ってしまうのも仕方ありませんよね。』

なんて言うはずがないと思いKotakuの記事を読んでみると、

“That kind of thing really annoys me because Sony makes it easier for me to pirate a movie than to watch one I legally purchased”

となっていました。

悪意のある翻訳をしないかぎり、つい海賊行為に走ってしまうのも仕方ないといった、文脈からはまるでPAL版のDVDを見れないのだから(NTSC版を買い直すのはお金の無駄なので)海賊行為に走るのはやむを得ないという「海賊行為へ理解を示した」かのような日本語になるのか理解に苦しみます。

英文を直訳すると

『そのようなものは本当に私を悩ませます。なぜならばソニーは私にとって私が合法的に購入した映画を見ることよりも映画の海賊行為をすることの方をより簡単にできるようにしているからです。』

内容としてはwololo氏は自分で買ったPAL版DVDをNTSC版PS3で見ることができないが、それをできるようにすることよりも海賊行為をすることの方が容易にできてしまう現状がおかしい、つまり合法的な行為よりも違法行為の方が簡単にできること自体が変だと言っています。それをどうやったら『つい海賊行為に走ってしまうのも仕方ない』という翻訳にして公表してしまうのか理解に苦しみます。

もちろん内容によっては『AかBかだとBでも仕方がない』と訳してはまるときはありますが、合法か違法かだと違法でも仕方がないと訳すのは今回の文脈には当てはまりません。しかも「つい海賊行為に走ってしまう」の「つい」はどこをどうしたらそういうニュアンスがあると勘違いするのでしょうか。

なお、Kotaku Japanでは以前にもVHBL初のexploitを発見したteck4氏のことを「Teck4」というPSPハッカーグループと書いて指摘を受けて訂正したことがありました。事実誤認のまま記事を掲載していることからも分かる通り編集部が存在しているにもかかわらずチェック機能がかなり甘いです。『DOOM』を起動させたのと同じ脆弱製を利用して制作したエミュレータがVHBLという文章になっていましたのでそこも合わせて訂正しておきました。VHBLで『DOOM』を起動させただけなのにまるで別のハックが新たに公開されたと勘違いしているようです。

[追記]
Kotaku Japanが誤訳を認めて、私が指摘したところを訂正してきました。

[訂正 2012.3.12]Wololo氏の発言に一部不適切な翻訳がございました。謹んで訂正させて頂きます。

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